毎年3月頃になると人々の関心が集まる「花粉」ですが、 夏〜冬には話題にもされなくなってしまいます。
このように花粉情報にはシーズン/シーズンオフがあるようですが、 より正確な予報をお届けできるよう、実は1年を通じて観測・分析を行っています。

 花粉情報が出来るまで

 春に提供される花粉情報は前年の夏からその準備が始まります.スギの花芽は夏にできるので,花芽の出来高には夏の気象条件が大きく影響します.しかし,天気による予測だけでは誤差が生じるので,スギの雄花が大きく生長する秋に,植林地の林を検分して実際に雄花の出来具合を観察して飛散総量を予測します.夏の間に成長した雄花は秋に成長をやめ一端休眠状態になります.そして12月になると気温の変化が刺激となり休眠から覚め,花を咲かすための準備を開始します.冬にはこの休眠打破の気象因子を分析し,花粉が飛び始める時期を推定します.いよいよ春になりシーズンに入れば,毎日飛んでくる花粉を観測,集計します.過去の飛散数と種々の気象条件を解析して作成した予測式から翌日の花粉数を計算して求め,天気予報を加味して花粉予報として発表します.さらに予報に正確を期するため,林を検分して開花状況を確認します.


 花粉情報で知りたいこと

 花粉症の予防と治療の効果は,セルフケアとメディカルケアの適切な組み合わせによって決まります.つまり花粉情報を上手に活用して,吸い込む花粉の量を少なくすれば,少ない薬で効果的に治療が出来,シーズンを快適に過ごすことが出来るのです.花粉情報のなかで最も重要な情報はシーズンに飛んでくる花粉の総量です.スギ花粉には豊作年,不作年があることが知られています.花粉の総量がわかれば,患者さんにとっては予防や治療の心構えが出来ますし,薬屋さんやお医者さんにとってはお薬の生産量や在庫管理に役立つはずです.次に重要なことは花粉シーズン全体の流れをつかむことです.飛散開始時期は予防や治療を始める目安になりますし,飛散の最盛期には数日の間にシーズン全体の総花粉量の3〜6割が飛びますから,この数日だけでも外出を控えて花粉を吸わなければ,花粉症発病の予防にもなりますし,症状の重症化を防止することも出来ます.